旧世紀面 | 世界はまだ、痛みの中にある
七億人の女性が、無償の世話で職を失う
――数えられない労働という暴力
暴力は、殴ることだけではない。誰かの人生を静かに閉じ込めることも、暴力になりうる。世界で女性は、男性の二・五倍の時間を無償のケア労働――育児、介護、家事――に費やしている。その結果、働ける年齢の女性の四十五パーセント、実に七億八百万人が、家庭でのケア責任だけを理由に労働市場の外に置かれている。男性で同じ理由の人は、わずか五パーセント。もしこの無償労働に値段をつければ、国によってはGDPの四割に達する。世界を回している労働なのに、統計にもGDPにも現れず、「女の役目」として当たり前とされる。見えないことそのものが、選択肢を奪い、時間を奪い、人生を狭める。これもまた、抗いにくい静かな不公正である。
新世紀面 | それでも、光は生まれている
「女の役目」を、社会の土台と呼び直す
――ケアへの投資が三億の仕事を生む
見えないものを、見えるようにする動きが始まっている。国連機関は、ケアを「経済の見えない土台」と呼び直し、そこへの投資が二〇三五年までに三億もの働きがいのある仕事を生みうると示した。ケア分野への一ドルは、建設業の二〜三倍の雇用を生み、しかも排出は約三割少ない。五十を超える国でケア制度を強化する取り組みが進み、有償の育児や介護、女性の時間を奪う家事を減らす仕組みが整えられつつある。目指すのは、ケアを「女性の義務」ではなく、報酬と誇りと社会の支えに値する「技能ある仕事」として認め直すこと。誰かを世話する労働が、日陰から光の当たる場所へと運ばれようとしている。それは、世話を担う人も、される人も、共に尊厳を取り戻す道だ。
今日の言葉
誰にも見えない場所で、
あなたが世界を支えてきた。
その手を、私は見ている。
あなたは、独りではない。
クイーンQUEEN ― 闇を引き受ける者